超小型モータの修理
2013/5/12

 ドラえもんのタケコプターが動かなくなりました。発電機を回してやると、ドラえもんがタケコプターで飛び上がるはずなんですが。

 中を調べると、モータが回転していません。発電機は正常に発電しています。
 モータは極めて小さなもので、直径 6mm 、長さが 12mm です。もっとも携帯電話の振動発生用のモータは直径が 4mm くらいですから、それに比べると大きめですが、プラレールなどのモータに比べると格段に小さく感じます。

 不注意で馬鹿な失敗をしてしまいました。
 例によってブラシのトラブルだろうと見当をつけて中を調べたら、意外にもブラシには異常はみられません。
 そこで汚れを落とす程度の手当をして再び組立てて通電してみたら、モータは回転するどころか異常電流が流れて発熱してきました。
 慌てて電源を切って調べたら、なんとブラシが絡まりあって、黒く焼け焦げていました。組付けミスでブラシを絡ませたようで、短絡電流を流してしまいました。
 ブラシの変形は修復できる状態ではなかったので、ブラシを作り直すハメになりました。元のブラシは 0.05mm 厚の 板材を使っていましたが、 0.08mm のリン青銅の板を手に入れて(注)なんとか作りあげました。

(注)たまたま彫金用の圧延ローラを使わせてもらえたので、0.3mm 厚のリン青銅の板材を圧延しました。 この種の機械の限界かもしれませんが、0.08mm までしか圧延できませんでした。

 これでテストしてみると、モータは回転しません。念のため手で回してやると何と回り出したではありませんか。 やれうれしやと思ったのもつかの間、電源を切って再投入するとまた回りません。何か原因がありそうです。

 いろいろ調べたら、5極の整流子の中の1極で導通が無いことが分かりました。モータの場合ロータの コイルがどこかで切れても、整流子での導通が無くなることはありません。従ってコイルの断線ではなさそうです。
 よくよく観察したら、整流子とコイルとの接続がはがれているのが見つかりました。コイルを整流子にハンダ付けしたら、モータは正常に回るようになりました。

 ムーブメントをドラえもんに組み込んで最終テストをしました。残念ながらドラえもんは飛び上がってくれません。
 9g のドラえもんですが、タケコプターを回すと 3g まで体重が減ります。しかし0g にはなりませんので、飛び 上がるわけがありません。結局モータの修復が不完全でモータが力を出し切っていないんですね。ブラシ部分で大きな ロスを発生しているのだろうと思っています。

 まあこの程度が我々素人に出来る限界かもしれません。今回の修理はこれで勘弁してもらうつもりです。 (モータの交換は考えていません。)

試運転中に壊れました

 何回か試運転しているうちにまたモータが回らなくなりました。左図の矢印のあたりでブラシとロータが干渉したようです。ブラシが押し曲げられて整流子と接触しなくなり、整流子とコイルの接続も物理的に引きちぎられたように3箇所で外れてしまいました。

 原因は修復したブラシの幅が広すぎて出っ張ったためです。元のブラシが 0.8mm 程度の幅だったのに対し、修復したものは 1.3mm くらいあり、わずかにあったクリアランスが無くなったか、マイナスになってしまったためと思われます。

 ブラシの幅を狭めて作り直してみていますが、どうも 1mm 程度が限界のようです。このままだとブラシケースからまだブラシがわずかにはみ出しているので、また接触事故を起こしかねません。そこで 0.05mm 厚さのテフロンのシートで絶縁ワッシャーを作って干渉部に挿入してみました。

 これが奏功したのかモータはかなり元気に回るようになりました。不思議なことに、流れる電流も2割ちかく増加しています。前回は 3V で 80mA 程度だったのが 100mA 見当流れるようになりました。
 もしかしたらタケコプターの能力も向上したのではないかと期待したのですが、残念ながら目に見える変化はありませんでした。単にどこかの物理的抵抗が増えただけのようです。

なんとドラえもん
飛び上がりました

 客先の都合で返却がだいぶ遅れました。6月22日、ようやく修理品を引き取りに来ていただきました。その場で持ち主の子供が試運転したら、なんとドラえもんが飛び上がりました。
 これにはビックリしましたが、それ以上にビックリしたのは子供が発電機を回したその勢いでした。さんざんモータをいじった身としては、とても恐ろしくてそんなに激しく発電機を回すことはできませんでした。
 しかし、そのような使い方をするとモータの回転数をひどく上げることになるので、またすぐにモータが破損するような気がします。